アーキテクチャ

2019.03.25

Author:

放送システムが IP 化される!?

ビジネス推進本部 第3応用技術部 第2チーム
細谷 典弘

私が Interop のイベントに行ったときに、併設でデジタルサイネージのイベントが開催されていました。面白そうだなと思いブースを回っていたのですが、4K テレビの前を通ったとき、あまりの画面の美しさに足が止まってしまいました。

そのときは、まさか私がこの映像の伝送システムに関わるとは思っていませんでした。

しばらくして、私が担当しているデータセンタースイッチに、Media over IP (Video over IPとも言う)に関する機能が追加されました。
そして「なぜ、データセンタースイッチに放送系の機能?」という疑問から、私の放送システムのIP 化技術に関わる調査・検証が始まります。
調査して分かってきたのが、4K や 8K のような高解像度の映像が、IP 化の一因になっているということでした。

4K の映像を送信するためには 12Gbps 必要であり、少し前までは 3G-SDI を4 本束ねて 12Gbps を実現していました。いまでは 12G-SDI も販売され始め、SDI ケーブル 1 本でも対応が可能になっています。

データセンターネットワークを担当としている私としては、「えっ、いまごろ 12G 対応!?」という驚きでした。すでにデータセンタースイッチの世界は 400G の世界が始まっています。
要するに、SDI の帯域の進歩よりも IP の帯域の進歩の方が圧倒的に早く、8K などにも簡単に対応できそうです。
また、光ケーブルは長距離にも対応し、さらにケーブルも細いので、SDI ケーブルよりも簡単に敷設できます。
つまり、高解像度の放送システムに IP が適しているようにみえます。

しかし、IP のネットワークはベストエフォートであり、落ちることが前提のネットワークになります。ネットワークに輻輳が起これば、スイッチでパケットのドロップが発生します。

でも、落ちるといっても、先に紹介したように、IP のネットワークでは広帯域化が進んでいるので、放送システムを IP ネットワークに接続するだけで問題ないのでは、と考えてしまうかもしれません。
しかしながら IP の世界では、帯域がじゃぶじゃぶ(IP の世界では帯域に余裕があるような環境をじゃぶじゃぶと呼ぶことがあります)だったとしても、通信パケットを流すために使うリンクで偏りが発生し、パケットのドロップが発生する可能性があります。
さらに IP ネットワークは、映像や音声以外の通信にも使うことも可能ですが、デフォルトのままでは映像や音声のパケットがドロップする可能性があるため、映像や音声のパケットを優先してドロップさせない仕組みが必要になります。

また、放送システムの IP 化には、現在の放送システムの同期で使われているBB (Black Burst) 信号に代わる仕組みも必要になります。IP のネットワークでは、BB 信号に代わる仕組みとして、時刻を高精度で同期させる PTP (Precision Time Protocol) を用います。
PTP のパケットも、ただネットワーク内を通過させるだけでは、カメラとモニターなどで同期を行うことは出来ないため、ネットワーク機器に PTP の設定が必要になります。

また、SDI のときと同じような運用が出来るように可視化も必要です。

つまり、放送システム用のネットワークを構築する場合に、スイッチの選定やネットワークの設計を何も考えずに行ってしまうと、SDI のような高品質な伝送路を構築することはできません。

そこで今回は、映像や音声の通信をドロップさせずに SDI のような高品質のネットワークを実現する Non-Blocking Multicast に関して、弊社の匠コラムで紹介しています。
匠コラム:放送システム IP 化に向けたネットワーク技術

匠コラムでは、PTPのような放送システム IP 化に向けて必要な情報を今後もアップしていきますので、期待していただければ幸いです。

ネットワンシステムズでは、電話が IP 化されたときもお客様のお役立ちになれるように調査・検証を行い、IP 化のサポートを行ってまいりました。
放送システムの IP 化に関しても、実際に映像装置の機器を使って調査・検証を行い、お客様の IP 化にお役立ちできるようにしてまいります。

4K テレビ、私もそろそろ欲しいな・・・。

執筆者プロフィール

細谷 典弘
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部
第3応用技術部 第2チーム 所属

マルチクラウド基盤に用いられるハードウェアとソフトウェアの最先端テクノロジーに関する調査・検証と、案件の技術支援をする業務に従事。
特に Kubernetes に注目している。
また最近では、放送業界の IP 化に向けた技術調査・検証も行っている。
・CCIE Routing and Switching (#16002)
・CCIE Data Center (#16002)
・Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack(RHCSA) (EX210)
・電気通信主任技術者(伝送交換)

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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